自分の視界には大きな水槽があって、そこには何もいない。
その大きい水槽の中に、また中くらいの四角い水槽が三つあって、縦に並んでいる。三つあるうち、真ん中の水槽にだけ魚がいる。魚は三匹。
それと別に、魚が入っているそれよりも大きい水槽がある。その水槽にだけは出入り口がなく、水も入っていない。その中には空気が充満していて、隔離空間のようだった。その中で、陶器でできた人形のような雰囲気の小さい女の子が1人手遊びをしている。こちらを気にすることも、笑うことも泣くこともなく、無表情。ただ暇を潰しているようだった。
同じ部屋にいつの間にか現れていた年上の女性に話しかけられて、その水槽から少し目を離した。
目線を戻すと、出入り口がないはずのその水槽には当たり前のような顔で魚が入り込んでいて、小さい子の首を噛み、絡みついて、そのまま締め殺そうとしている。血は出ていないし、苦しんでもいない。やはり、不自然なほどに動きがない。逃れようともがくことも、誰かに助けを求めることもしない。どこをとっても生きている感じがしない。なのに、絶対に生きている存在だと何故か分かった。
そのまましばらく見ていたけど、テーブルの上に置かれたカップが重力に逆らわないのと同じように、魚の動きに合わせて水槽の底に当たり、コツコツと音を立てるだけだった。
先ほど話しかけてきた女性は、彼女を助けなくては!と焦っていた。自分では手出しが出来ないと言いながら、どこかに助けを求める電話をしていた。正確な番号を押せないほど動揺していた。
自分もどこかに助けを求めるべきだろうと思い、近くにあった固定電話を手にとったが、かけるべき電話番号が思い当たらない。
実のところ、助けたいという気持ちは少しもなかったのだが、ここで受話器を置いたら後々自分が糾弾されるだろうと思い、イタズラをする子供のようにボタンをめちゃくちゃな順番で押すことしか出来なかった。
